SAP Signavio Process Insightsを活用した業務プロセス分析 ブログではSAP Signavio Process Insightsの全体的な概略を紹介しました。今回はProcess Insightsにおける修正の推奨や先進ソリューション推奨についてもう少し具体的に見てみて、S/4HANAの様々な機能をより多く活用して投資効果を高めるための参考となればと思います。
Process Insightsは業務実行のパフォーマンを低下させる阻害要因の情報とそれに対する改善のための方策の推奨案を提示します。推奨には「修正の推奨案」と「先進ソリューションの推奨案」の2種類があります。
修正の推奨案
「修正の推奨案」では、パフォーマンス指標のデータに対してパフォーマンス悪化の根本的原因を、マスタデータの整備、未処理のトランザクションデータの整理、標準提供されている処理自動化のためのジョブ機能等を利用して解決できるものが提示されます。
マスタデータの整備にあたるものとしては、概要のブログで例にあげた、期日超過の債権が多く発生していることへの対処として、得意先マスタデータの督促処理設定の推奨などがあります。
トランザクションデータに関連するものとしては、例えば納入日程が1年以上前の明細行が残っている納入が見込まれない受注明細を整理することが該当します。これは「期限超過の納入日程行明細」というパフォーマンス指標に関連しています。Process Insightsが提示する推奨アクションは、販売伝票の一括変更機能を使用した明細の拒否です。
ただし、そもそもどうしてこういう状況が発生しているのかをより詳細に原因分析する必要もあるかもしれません。その場合、今回は詳細には触れませんがSAP Signavio Process IntelligenceによるプロセスマイニングやSAP Signavio Process Managerによるプロセス設計につなげることも有効な方策です。Process InstightsとProcess Intelligenceを連携したPlug and Gain Approachという方策を提供していますので、別の機会に紹介できればと思います。
また「修正の推奨案」で提示される従来からの解決策だけでなく、S/4HANAやBTPの先進ソリューション機能を活用することが解決の糸口になる可能性もあります。先進ソリューションの推奨案については後程、紹介します。
自動化の推奨案は標準で用意されている自動化機能、例えば以下で挙げられているのは出荷伝票や請求書の自動作成のための標準レポートのバックグランドジョブをスケジュールするなどです。
例えばここであげられている「請求書の自動作成を向上させます」という推奨をクリックして詳細を確認します。そうすると以下のような詳細が表示されて、ABAP レポート SDBILLDL(請求待一覧更新)の利用に関する説明を確認できます。この機能はトランザクションコードVF04一括請求更新でもスケジュールすることができるものです。S/4HANAの場合は「請求登録スケジュール」というFioriアプリとしても提供されています。このように推奨によっては多少その業務領域機能の最新知識を元に読み替えが必要な場合もありますが、自動化スケジュール機能の活用による改善機会を把握できます。
参考までに、以下がFioriの場合の該当機能のアプリである請求登録スケジュールの画面です。販売組織・流通チャネル・製品部門による販売エリア、得意先などを指定して一定期間の請求日付の対象伝票に基づいて、請求書を自動登録します。
先進ソリューションの推奨案
次に先進ソリューションの推奨案を見てみましょう。先進ソリューションに該当するのは、S/4HANAならではの分析と実行が融合した高度なFioriアプリケーション、異常の検知とアクションを促す状況対応(状況処理/シチュエーション・ハンドリング)、S/4HANAに組み込まれているAI機能、S/4HANAと連動してあらかじめ用意されているBTPのRPA機能等の自動化、そしてLOBクラウドソリューション(例:Sales CloudやCommerce Cloud等のカスタマーエクスペリエンス)やBusiness Network(例:Aribaのサプライヤー連携機能)などです。エンドトゥエンドプロセスに関連した先進ソリューションの推奨案の一覧上のリンクからは、FioriアプリであればFiori Apps Libraryの該当アプリの説明、状況対応やBusiness AIの場合はオンラインドキュメント、BTPのProcess Automationによる自動化の場合はBusiness Accelerator Hubの該当文書が開くようになっています。
例えば受注フルフィルメント問題のFiori Apps利用の推奨を開くと以下のようにFiori Apps Libraryの該当するFiori Appsの内容説明や利用方法に関するドキュメントのリンクページが開きます。
受注フルフィルメント問題のFioriアプリは問題が発生して処理が止まっている受注や予定通り出荷・請求されていない等の問題を様々な切り口から確認できます。問題の把握→原因の確認→対処を一連のプロセスで行うことができ、早期発見・対処の早期化に寄与します。こうした課題の発見~アクションを効率的に行えることは、S/4HANAになって大きく進化した部分です。
もう一度先ほどの先進ソリューションの推奨案の一覧のページを見てみます。この受注フルフィルメント問題の推奨案の行ではプロセスフローの関連する阻害要因のリンクも確認できます。阻害要因項目の数字をクリックすると関連する、ここでは17個の阻害要因の一覧が表示され、さらにその阻害要因の分析画面へとリンクしています。
一番上の未確認の受注明細という阻害要因をクリックすると、以下のようにプロセスフロー内の問題部分からたどってきた場合と同じ画面で、この阻害要因に関するベンチマークや関連伝票の詳細、修正の推奨案、先進ソリューションの推奨案のタブとその情報が表示されます。
先進ソリューションの推奨案タブを開けば、今回推奨案の一覧からたどってきた元の受注フルフィルメント問題が推奨案として表示されています。
先進のソリューションの推奨案の例としてFiori Appsを見てきましたが、Fiori AppsはS/4HANA環境であれば、他の追加ライセンス等の必要なく活用できるものです。しかしERPからS/4HANAになっても従来のSAP GUIのまま操作しているケースも多くあります。S/4HANAの目指していることの一つである、気づきや分析と実行を融合した高度な業務実行へのシフトのために、まずは有効なFiori Appsの活用を検討する手段としてもProcess Instighsは有効です。
同様に設定だけで利用できる先進ソリューションの推奨案に状況対応(状況処理/シチュエーションハンドリング)があります。不完全なデータや処理の遅延、例外や異常な状況の発生をユーザーに通知する機能をS/4HANAでは活用できます。以下のリードから入金プロセスの例では、受注登録に対してデータが不完全な状況であったり、納入日付に到達している受注伝票等が改善に利用できる機能として挙げられています。関連する文書をリンクから表示し、導入を検討します。
ここまで見てきた先進ソリューションの一覧画面からの確認は、S/4HANAをどのくらい効果的に活用する要素、余地があるかを包括的に把握することに向いています。
一方で、概略ブログで紹介したように、Process Insightsでは以下のようにプロセスフローのパフォーマンス分析から個別の阻害要因、ボトルネックとなっている指標側から組織別のベンチマークを比較、そしてどの修正案や先進ソリューションが効果があるかを確認するといった手順がとれました。様々な角度からS/4HANAを通した業務パフォーマンス向上の可能性を把握できます。
ここまでご紹介したようにSAP Signavio Process Insigtsは業務実行のパフォーマンスを低下させている要因を把握するとともに、その解決につながるS/4HANAや拡張ソリューションの推奨案を提示することで、S/4HANA導入の業務効果を最大化し、継続的に業務改善を行うための手段として有効なものとなっていますので、ぜひ活用をご検討ください。
SAP Signavio Process Insightsを活用した業務プロセス分析 ブログではSAP Signavio Process Insightsの全体的な概略を紹介しました。今回はProcess Insightsにおける修正の推奨や先進ソリューション推奨についてもう少し具体的に見てみて、S/4HANAの様々な機能をより多く活用して投資効果を高めるための参考となればと思います。Process Insightsは業務実行のパフォーマンを低下させる阻害要因の情報とそれに対する改善のための方策の推奨案を提示します。推奨には「修正の推奨案」と「先進ソリューションの推奨案」の2種類があります。修正の推奨案「修正の推奨案」では、パフォーマンス指標のデータに対してパフォーマンス悪化の根本的原因を、マスタデータの整備、未処理のトランザクションデータの整理、標準提供されている処理自動化のためのジョブ機能等を利用して解決できるものが提示されます。マスタデータの整備にあたるものとしては、概要のブログで例にあげた、期日超過の債権が多く発生していることへの対処として、得意先マスタデータの督促処理設定の推奨などがあります。トランザクションデータに関連するものとしては、例えば納入日程が1年以上前の明細行が残っている納入が見込まれない受注明細を整理することが該当します。これは「期限超過の納入日程行明細」というパフォーマンス指標に関連しています。Process Insightsが提示する推奨アクションは、販売伝票の一括変更機能を使用した明細の拒否です。ただし、そもそもどうしてこういう状況が発生しているのかをより詳細に原因分析する必要もあるかもしれません。その場合、今回は詳細には触れませんがSAP Signavio Process IntelligenceによるプロセスマイニングやSAP Signavio Process Managerによるプロセス設計につなげることも有効な方策です。Process InstightsとProcess Intelligenceを連携したPlug and Gain Approachという方策を提供していますので、別の機会に紹介できればと思います。また「修正の推奨案」で提示される従来からの解決策だけでなく、S/4HANAやBTPの先進ソリューション機能を活用することが解決の糸口になる可能性もあります。先進ソリューションの推奨案については後程、紹介します。自動化の推奨案は標準で用意されている自動化機能、例えば以下で挙げられているのは出荷伝票や請求書の自動作成のための標準レポートのバックグランドジョブをスケジュールするなどです。例えばここであげられている「請求書の自動作成を向上させます」という推奨をクリックして詳細を確認します。そうすると以下のような詳細が表示されて、ABAP レポート SDBILLDL(請求待一覧更新)の利用に関する説明を確認できます。この機能はトランザクションコードVF04一括請求更新でもスケジュールすることができるものです。S/4HANAの場合は「請求登録スケジュール」というFioriアプリとしても提供されています。このように推奨によっては多少その業務領域機能の最新知識を元に読み替えが必要な場合もありますが、自動化スケジュール機能の活用による改善機会を把握できます。参考までに、以下がFioriの場合の該当機能のアプリである請求登録スケジュールの画面です。販売組織・流通チャネル・製品部門による販売エリア、得意先などを指定して一定期間の請求日付の対象伝票に基づいて、請求書を自動登録します。先進ソリューションの推奨案次に先進ソリューションの推奨案を見てみましょう。先進ソリューションに該当するのは、S/4HANAならではの分析と実行が融合した高度なFioriアプリケーション、異常の検知とアクションを促す状況対応(状況処理/シチュエーション・ハンドリング)、S/4HANAに組み込まれているAI機能、S/4HANAと連動してあらかじめ用意されているBTPのRPA機能等の自動化、そしてLOBクラウドソリューション(例:Sales CloudやCommerce Cloud等のカスタマーエクスペリエンス)やBusiness Network(例:Aribaのサプライヤー連携機能)などです。エンドトゥエンドプロセスに関連した先進ソリューションの推奨案の一覧上のリンクからは、FioriアプリであればFiori Apps Libraryの該当アプリの説明、状況対応やBusiness AIの場合はオンラインドキュメント、BTPのProcess Automationによる自動化の場合はBusiness Accelerator Hubの該当文書が開くようになっています。例えば受注フルフィルメント問題のFiori Apps利用の推奨を開くと以下のようにFiori Apps Libraryの該当するFiori Appsの内容説明や利用方法に関するドキュメントのリンクページが開きます。受注フルフィルメント問題のFioriアプリは問題が発生して処理が止まっている受注や予定通り出荷・請求されていない等の問題を様々な切り口から確認できます。問題の把握→原因の確認→対処を一連のプロセスで行うことができ、早期発見・対処の早期化に寄与します。こうした課題の発見~アクションを効率的に行えることは、S/4HANAになって大きく進化した部分です。もう一度先ほどの先進ソリューションの推奨案の一覧のページを見てみます。この受注フルフィルメント問題の推奨案の行ではプロセスフローの関連する阻害要因のリンクも確認できます。阻害要因項目の数字をクリックすると関連する、ここでは17個の阻害要因の一覧が表示され、さらにその阻害要因の分析画面へとリンクしています。一番上の未確認の受注明細という阻害要因をクリックすると、以下のようにプロセスフロー内の問題部分からたどってきた場合と同じ画面で、この阻害要因に関するベンチマークや関連伝票の詳細、修正の推奨案、先進ソリューションの推奨案のタブとその情報が表示されます。先進ソリューションの推奨案タブを開けば、今回推奨案の一覧からたどってきた元の受注フルフィルメント問題が推奨案として表示されています。先進のソリューションの推奨案の例としてFiori Appsを見てきましたが、Fiori AppsはS/4HANA環境であれば、他の追加ライセンス等の必要なく活用できるものです。しかしERPからS/4HANAになっても従来のSAP GUIのまま操作しているケースも多くあります。S/4HANAの目指していることの一つである、気づきや分析と実行を融合した高度な業務実行へのシフトのために、まずは有効なFiori Appsの活用を検討する手段としてもProcess Instighsは有効です。同様に設定だけで利用できる先進ソリューションの推奨案に状況対応(状況処理/シチュエーションハンドリング)があります。不完全なデータや処理の遅延、例外や異常な状況の発生をユーザーに通知する機能をS/4HANAでは活用できます。以下のリードから入金プロセスの例では、受注登録に対してデータが不完全な状況であったり、納入日付に到達している受注伝票等が改善に利用できる機能として挙げられています。関連する文書をリンクから表示し、導入を検討します。ここまで見てきた先進ソリューションの一覧画面からの確認は、S/4HANAをどのくらい効果的に活用する要素、余地があるかを包括的に把握することに向いています。一方で、概略ブログで紹介したように、Process Insightsでは以下のようにプロセスフローのパフォーマンス分析から個別の阻害要因、ボトルネックとなっている指標側から組織別のベンチマークを比較、そしてどの修正案や先進ソリューションが効果があるかを確認するといった手順がとれました。様々な角度からS/4HANAを通した業務パフォーマンス向上の可能性を把握できます。ここまでご紹介したようにSAP Signavio Process Insigtsは業務実行のパフォーマンスを低下させている要因を把握するとともに、その解決につながるS/4HANAや拡張ソリューションの推奨案を提示することで、S/4HANA導入の業務効果を最大化し、継続的に業務改善を行うための手段として有効なものとなっていますので、ぜひ活用をご検討ください。 Read More Technology Blogs by SAP articles
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