[日本語化] Generative AI with SAP – Part4 – SAP BTPにおけるAI Foundation

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 このブログはEcosystem Growth活動の一環で「Generative AI with SAP@Raja_Gupta)」シリーズを日本語化・加筆したものです。このシリーズでは、SAPがポートフォリオ全体でどのように AI および Generative AI を活用しているかを理解することに焦点を当てています。

このシリーズで学べること:

SAPがポートフォリオ全体で AI および Generative AI をどのように活用しているかSAP Business AI とは何か、そしてSAPのパートナーや顧客がそれをどのように活用できるのかSAP AI Core・SAP AI Launchpad・Joule とは何かSAPのAI戦略においてSAP BTPが果たす役割実際のユースケースやハンズオン事例など

理解しやすくするため、このブログシリーズは短いセクションに分けられています。それぞれのブログは、10~15分程度で学習できる内容です。

Part1 – SAP Business AIの概要Part2 – SAP Business AIの構成要素Part3 – Joule:SAPのGenerative AI CopilotPart4 – SAP BTPにおけるAI Foundation [現在のブログ]Part5 – SAP AI Coreの概要Part6 – SAP AI Launchpadの概要Part7 – SAP AI CoreとSAP AI Launchpadの使い方Part8 – SAP AI CoreにおけるHello WorldPart9 – Generative AI Hubの概要Part10 – SAP HANA Cloud vector enginePart11 – RAG(Retrieval-Augmented Generation)・SAP AI Core・Generative AI Hub・HANA Cloud vector engine を用いた実際のユースケース

このブログはシリーズの第4回目であり、AI Foundation について学びます。

Note: 後続のブログも順次公開予定です。

 

 

まずは SAP BTPについて簡単におさらいしましょう

2021年1月、SAPは「SAP Business Technology Platform(SAP BTP) 」を発表しました。SAP BTPは、SAPのシステム全体を支える技術基盤であり、顧客やパートナーにとって欠かせない存在です。

簡単に言えば、SAP BTPは様々な SAPソリューションやサービスを一つにまとめたプラットフォームです。これにより、企業は新しいクラウドソリューションを構築したり、既存の SAPシステムを柔軟に拡張したりできます。

Note: 詳しく知りたい方は「Explaining SAP Business Technology Platform (SAP BTP) to a Beginner」を参考にしてください。

 

SAP BTPで AI を簡単に活用する方法とは?

SAPの顧客やパートナー企業で開発を担当していると、次のような課題に直面することがあるかもしれません:

SAP BTP上で新しいアプリケーションを作る、または既存システムを拡張する必要があるアプリケーションに AI機能を組み込みたいサードパーティの AIベンダーや大規模言語モデル(LLM)プロバイダーと直接契約せずに、簡単かつ効率的に導入したい

こうした課題を解決するために SAPが提供するのが、AI Foundation です。

 

AI Foundationとは?その概要と活用方法

AI Foundationは、SAP BTP上に用意された「すぐに使えるAIサービスとツール」のセットです。これにより、以下のことが可能になります:

信頼性が高く、安全でスケーラブルな方法で、AI機能をアプリケーションに組み込み可能顧客やパートナー企業が新しい AI拡張機能やアプリケーションを簡単に作成サードパーティ大規模言語モデル(LLM)との個別契約を避け、手間を最小化

 

つまり、AI Foundationを使うことで、開発者はより迅速かつ効率的に AIを活用できるのです。
以下の図は、AI Foundationの全体像を示しています。

 

SAP BTP上のAI Foundationは、顧客・パートナー向けの抽象化レイヤーを提供

SAPはいくつかのAIベンダーや大規模言語モデル(LLM)のプロバイダーと提携しています。これにより、顧客がサードパーティ企業との個別契約を結ぶことなく、AIによるイノベーションの恩恵を受けられる環境を整えています。

たとえば、GPTシリーズなどの大規模言語モデル(LLM)を活用したい場合、わざわざ別のライセンスを購入する必要はありません。SAP BTP上の「Generative AI Hub」を通じて、複数のベンダーが提供する大規模言語モデルへ簡単にアクセスできます。

 

AI Foundationを構成する主要コンポーネント

以下の図は、AI Foundationを構成する主な要素を示しています。

それでは、これらのコンポーネントを一つひとつ詳しく見ていきましょう。

 

1. AI Business Services

AI Business Servicesは、SAP BTP上で提供される、すぐに利用可能な汎用AIサービス群です。
以下のような特徴があります:

AI Business Servicesの活用によって、自社アプリケーションへのAI機能組み込みを簡単に実現ビジネスに関連したデータで事前学習されたAIモデルによって、幅広いビジネスシナリオに対応可能

以下の図が示すように、AI Business Servicesは大きく3つのカテゴリに分けられます。

 

Document Processing

インテリジェントなDocument Processingを可能にするサービスとして、「Document Information Extraction」があります。

Document Information Extraction には、以下のような特徴があります:

機械学習を活用することで、書類からの情報抽出プロセスを自動化し効率化を支援ヘッダーや表形式で整理された情報が含まれる大量のビジネス文書を、効果的かつスムーズに処理

このサービスを利用すれば、以下のような効果が期待できます:

大量の書類をより正確かつ効率的に処理することによる人的エラーや手間の削減品質やコンプライアンスを強化しつつ、ビジネス文書関連の業務プロセスを改善

抽出した情報は、さらなるビジネスプロセスの自動化に活用可能です。たとえば、請求書や支払い依頼書を自動的に処理し、請求額と支払額を整合させるなど、業務を一層円滑に進めることができます。

 

Recommendation(レコメンデーション)

このカテゴリでは、人間による意思決定を支援・強化する以下3つのサービスが用意されています:

Personalized Recommendation(パーソナライズド・レコメンデーション)Data Attribute Recommendation(データ属性レコメンデーション)Business Entity Recognition(ビジネスエンティティ認識)

 

Personalized Recommendation は、様々な業務やアプリケーションで繰り返し活用できる柔軟なサービスです。以下のような特徴があります:

機械学習を用いて、顧客の閲覧履歴や商品説明に基づいて個別にレコメンデーションを提供します幅広いビジネスシナリオに対応できるよう学習済みモデルをトレーニングし、適用することが可能です

たとえば、SAPは Personalized Recommendation を活用し、SAP SuccessFactors の顧客向けに、毎月420万件以上の学習コンテンツを推奨しています。これにより、ユーザーはより適切なコンテンツに迅速にアクセスでき、学習体験の向上を実現しています。

 

Data Attribute Recommendation は、データセット内に欠損値がある場合に活用できるサービスです。このサービスは、以下のような特徴があります:

自然言語テキスト、数値、カテゴリ情報を入力として使用します製品・店舗・ユーザーなどのエンティティを複数クラスへ分類しますデータレコード内の欠損数値属性の予測および補完を実現します

このサービスを活用することで、以下のような効果が期待できます:

データ管理プロセスの自動化・高速化データメンテナンス時のエラーおよび手作業の削減データの一貫性および正確性の向上

 

Business Entity Recognition は、非構造化テキスト内に含まれる「ビジネス上の特定要素(エンティティ)」を自動的に見つけ出して強調表示するサービスです。ここでいうエンティティとは、請求書番号・顧客名・製品コード・取引先企業名など、業務で頻出する「識別可能な対象」を指します。たとえば、請求書に関する問い合わせメールから、請求書番号や取引先企業名などを抽出し、請求・支払い状況に関する繰り返し発生する問い合わせ対応を自動化することが可能です。

 

Machine Translation(機械翻訳)

SAPは世界各地で、さまざまな言語で利用されており、ほぼ全ての言語に対応する必要があります。そのため、必要な言語へのテキスト翻訳は重要な課題となります。この翻訳プロセスを迅速化・自動化するために、AI Foundationの一部として「SAP Translation Hub」が提供されています。

SAP Translation Hub は、複数の言語へのコンテンツ翻訳を支援する再利用可能なサービスです。このサービスを利用することで、ソフトウェアテキスト(例:UIに表示されているテキスト)や関連ドキュメントを高品質かつ高精度で迅速に翻訳できます。また、SAP承認済みの訳語や用語集、そしてSAP固有のコンテンツに特化して学習された機械翻訳を活用することが可能です。これにより、翻訳作業を効率化し、国際的な業務展開をスムーズにサポートします。

Note: 全てのAIサービスやその詳細は、SAP Discovery Center または Help Portal で 確認できます。

 

SAP顧客・パートナーは AI Business Services をどう活用できるか?

顧客やパートナーは、提供されているAPIエンドポイントに接続し呼び出すことで、SAPの AIサービスを自社の業務プロセスやアプリケーションに統合することができます。

以下は、その一例です。

Webサイト訪問者への Personalized Recommendation

たとえば、Personalized Recommendation を用いて、Webサイト訪問者に対して閲覧履歴やアイテム情報に基づく高度にパーソナライズされたレコメンデーションを提示できます。

以下の図は、このユースケースにおけるアーキテクチャの全体像を示しています。

この実現プロセスは、以下のステップで構成されています。

Note: 各ステップの具体的な手順は、こちらのチュートリアルで確認できます。

また、上記の Personalized Recommendation と同様の方法で、下図のように他のAIサービスも活用することが可能です。

 

SAP AIサービスに関する追加チュートリアル

Use Machine Learning to Extract Information from Business Documents and Enrich Data

Use Pre-Trained Machine Learning Models to Process Unstructured Text

Shape Machine Learning to Process Custom Business Documents

Use Machine Learning to Classify Data Records

Use Generative AI to Process Business Documents

 

2. Generative AI Management

AI Foundationの2つ目の重要な構成要素が「Generative AI Management」です。SAP BTPにおいて、このカテゴリに該当するサービスが「Generative AI Hub」です。 Generative AI Hubによって、様々な大規模言語モデル(LLM)を活用することができます。

それでは、Generative AI Hubについて詳しく見ていきましょう。

 

Generative AI Hubとは何か?

Generative AI Hubは、SAP BTP上でGenerative AIの機能を持つアプリケーション開発を迅速に実現するためのサービスです。このサービスを活用することで、開発者は Azure OpenAI が提供する GPT-4 やオープンソースの Falcon 40B など、複数のプロバイダが提供する大規模言語モデル(LLM)にすぐにアクセスできます。

Generative AI Hubは、SAP AI Core経由でのプログラムによる操作 及び SAP AI Launchpad内のプレイグラウンドを利用した操作 によって 複数のGenerative AIを活用できます。

さらにGenerative AI Hubは、プロンプトエンジニアリング ・ 生成結果の検証などの機能 を提供します。これにより、SAP BTP上でのGenerative AIアプリケーションの開発を、より安全で信頼性の高い形で加速できます。

 

以下の図は、Generative AI Hubを用いて複数の大規模言語モデル(LLM)にプロンプトを送信し、その生成結果を比較することで、最適なモデルを特定する一例を示しています。

Note: 上記の画像は、こちらのブログから引用したものです。

Note: Generative AI Hubの詳細については「Part9 – Generative AI Hubの概要」を参照してください。

 

AI Workload Management

AI Workload Managementは、ゼロから新しいAIモデルを構築したい、またはデータ準備・モデルのトレーニング・推論の実行・結果の分析といったAIワークフローを実行したい開発者を対象としています。また、標準化されスケーラブルかつクラウドプロバイダーに依存しない方法でAI関連のタスクを運用したい場合にも適しています。AI Workload Managementでは、AIモデルの作成・トレーニングから精度評価および推論用に公開するための必要なツールをすべて提供します。

AI Workload Managementの主なサービスは、次の2つです:

SAP AI CoreSAP AI Launchpad

 

SAP AI Core とは何か?

SAP AI Coreは、SAP BTP上で利用可能な、高機能なAIランタイムを提供するサービスです。SAP AI Coreを用いることで、AIモデルを効率良く大規模に学習しながら、プライバシーやコンプライアンスの確保を実現します。

SAP AI Coreの主な利点の一つは、幅広いプランからGPUやCPUコア、メモリなどの基盤となるインフラリソースを選択できる点です。また、自動スケーリング機能も備わっており、柔軟なリソース管理が可能です。SAP AI Coreで利用可能なさまざまなリソースプランは、こちらからご確認いただけます。

Note: SAP AI Coreの詳細については「Part5 – SAP AI Coreの概要」を参照してください。

 

SAP AI Launchpad とは何か?

SAP AI Launchpad は、SAP BTP上で利用可能な、複数のAIランタイム(SAP AI Core を含む)にまたがって、AIワークフローやAIモデルを管理・実行を提供するサービスです。

また、Generative AI Hub を通じて、ジェネレーティブAIの機能を提供します。さらに、直感的なユーザーインターフェースを通じて、AIシナリオにおけるライフサイクル管理を一元化できます。これにより、モデルの性能指標を継続的に監視し、必要に応じて再学習することが可能です。

Note: SAP AI Launchpad の詳細については「Part6 – SAP AI Launchpadの概要」を参照してください。

 

SAP AI CoreおよびSAP AI Launchpadに関する重要なポイント

SAP AI Core は SAP AI Launchpad とシームレスに連携されていますAIワークフロー管理・プロセス・タスクを容易にする使いやすいインターフェースを提供しますPostman や Pythonスクリプト を使用して操作することも可能ですSAP BTP上でマルチテナントなSaaSアプリケーションとして動作します(SAP AI Coreインスタンスを含む)複数の AIランタイムを一元的に管理するためのプラットフォームとして利用できます

 

ビジネスデータとコンテキスト

SAPシステムが他のAIプロバイダと大きく異なるのは、顧客の膨大なビジネスデータを保持している点です。これらのデータこそが、AIモデルを用いて実際のビジネス課題を解決するための鍵となります。

SAP HANA CloudSAP Datasphere などのソリューションを通じて、SAPはビジネスデータやコンテキストをAIモデルに提供します。特に SAP HANA Cloud vector engine は、Generative AI のユースケースに対応するために特別に設計されています。

 

SAP HANA Cloud vector engine とは何か?

SAP HANA Cloud vector engine は、SAP BTP上で提供される SAP HANA Cloud に新たに追加された機能です。SAP HANA Cloud vector engine を用いることで、独自のビジネスデータを活用したAIモデルの基盤を構築できます。

SAP HANA Cloud vector engine は、ベクターデータの効率的な格納・処理をサポートします。つまり、トランザクションデータ、空間情報、グラフデータ、JSONデータなど、多彩なデータタイプを同じSQL環境でベクトルデータと組み合わせ、結合・フィルタリング・選択といった操作が可能です。

以下は、SAP HANA Cloud vector engine がもたらす主な利点です:

ベクトルやその他のエンタープライズデータを同一データベース内に格納することで、データアーキテクチャ・管理・セキュリティを簡素化しますベクターデータを含むあらゆるデータタイプに対してSQLを用いた操作が可能です空間データ・グラフデータ・JSONデータ、カスタムSQLScriptをベースにしたクエリとベクトルクエリを組み合わせることで、新たなデータインサイトを提供しますSAP HANA Cloudクライアント(Python対応)、Python Machine Learning Client for SAP HANA(hana-ml)、CAP(Cloud Application Programming)を用いたベクターデータに基づくソリューションを構築できます

Note: SAP HANA Cloud vector engineの詳細については「Part10 – SAP HANA Cloud vector engine」を参照してください。

 

SAP HANA Cloudは、予測分析用のライブラリであるPredictive Analysis Library(PAL)及び 自動予測用のライブラリである Automated Predictive Library(APL)を提供しています。これらのライブラリを用いることで、ビジネスデータに直接適用可能な分類・回帰・時系列予測などのシナリオを実装できます。

また、SAPはデータ管理向けにSAP Datasphereというソリューションも提供しています。SAP Datasphere はデータ統合・データ品質管理・クレンジング(欠損値や重複値の補正など)・データガバナンス・アナリティクス(トレンド検出、過去データ分析、将来予測など)・自然言語処理といった様々な形でAIを活用し、ビジネスデータを最大限に生かせる環境を整えます。

 

Foundation Model

AI Foundation の枠組みのもと、SAP BTPはさまざまなGenerative AI を用いたユースケースを実現するための幅広い Foundation Model を提供しています。SAP は Google・Meta・IBM・Nvidia などの主要な汎用AIベンダーや大規模言語モデル(LLM)プロバイダーと提携することで、顧客にシームレスな体験を提供しています。

これらのファウンデーションモデルにより、SAPの顧客は急速に進化するイノベーションに対応しつつ、自身のシナリオに最適なモデルを柔軟に選択できるようになります。

Foundation Model とは何か?

Foundation Modelは、多種多様な形式のデータを大量に学習することで特定の分野における任意のタスクに対応できる、教師なし学習を用いて学習された深層学習モデルのことです。テキスト生成・画像生成など幅広いタスクに適応できます。

Foundation Modelは、様々なユースケースをサポートする汎用的な技術と見なされます。これらのモデルは、強力なハードウェアと高度な技術を使用して大規模なデータセットで事前に学習されているため、特定のアプリケーションごとに新しいモデルをトレーニングする必要が無く、時間と計算コストを削減することができます。

Note: 詳細については「What is Foundation Model?」をご参照ください。

 

SAP Foundation Models – 企業AIを再定義するSAP独自のFoundation Model

まずは、なぜ顧客がSAP独自の Foundation Model を必要としているのかを考えてみましょう。

汎用的な Foundation Model だけでは、SAPの顧客に十分でない理由

膨大なデータで事前学習された汎用的な Foundation Model は数多く存在します。AI Foundationでは、GPT-4、Llama2、Falcon-40b、Claude2など、こうした多様な大規模言語モデル(LLM)へ容易にアクセスできます。これらのモデルは素晴らしい性能を提供しますが、いくつかの課題も存在します。

大規模言語モデル(LLM)は古いトレーニングデータに依存する可能性

大規模言語モデル(LLM)を非常に優秀な同僚に例えてみます。その同僚は多くのことを知っていますが、昨年世界で何が起きたか知らず、あなたの会社固有の内部手続きや方針についても理解していません。これは、大規模言語モデル(LLM)が学習時点までのデータを基に学習しており、それ以降の新しい情報を持っていないためです。

個々の企業固有のデータやビジネスプロセスのコンテキストが欠如

「先週、わが社で最も重要なサプライヤーから受けたオファーについてどう思う?」と大規模言語モデル(LLM)に尋ねても正確な回答を返せない場合があります。これは、大規模言語モデル(LLM)が汎用的な知識で構成されており、特定の企業データやビジネスプロセスのコンテキストについて学習していないためです。

これらの問題は、適切なビジネスデータやコンテキストを補足すれば解消することができます。ここで登場するのが SAP Foundation Model です。SAPは、SAP固有のビジネスデータとコンテキストをLLMに取り入れることで、顧客にとって最適なモデルを生み出そうとしています。

 

SAP Foundation Model とは何か?

SAPは、汎用的な Foundation Model と深いビジネスプロセス知見およびビジネスデータを組み合わせ、独自の Foundation Model を設計しています。このモデルにより、顧客は特定のビジネスコンテキストに即した回答を得られるようになります。

SAP Foundation Model は、財務・営業・サプライチェーンなど、あらゆる主要なビジネス領域において非常に有用です。請求書の支払日を予測したり、サプライヤーの納品品質を評価したり、ビジネスプロセスの効率化を提案したりといった、汎用的な Foundation Model では対応が難しい日々のビジネス課題にも的確に応えることが可能になります。

さらに、SAP Foundation Model は、特定のシナリオに合わせたファインチューニング(追加学習)も可能であり、組み込み型AI分野でのSAPのリーダーシップをより強化します。顧客は豊富なSAPデータで学習された高性能なモデルを活用し、より優れた予測結果を得ることができます。

なお、SAP Foundation Model が利用可能になるのを待たず、今すぐビジネスデータのコンテキストをを活用したい場合は、Retrieval-Augmented Generation(RAG)と呼ばれる別のアプローチを用いることで、ビジネスデータのコンテキストを即座に活用し、より良い結果を得ることも可能です。

Note: RAGの詳細については「Part11 – RAG (Retrieval-Augmented Generation) ・SAP AI Core・Generative AI Hub・HANA Cloud vector engine を用いた実際のユースケース」を参照してください。

 

What’s Next?

Part5 – SAP AI Coreの概要

免責事項
本ブログに記載されているすべての見解および意見は、私個人のものであり、個人的な立場で述べられたものです。SAPは、本ブログに掲載された内容について一切の責任を負いませんので、あらかじめご了承ください。

 

​  このブログはEcosystem Growth活動の一環で「Generative AI with SAP(@Raja_Gupta)」シリーズを日本語化・加筆したものです。このシリーズでは、SAPがポートフォリオ全体でどのように AI および Generative AI を活用しているかを理解することに焦点を当てています。このシリーズで学べること:SAPがポートフォリオ全体で AI および Generative AI をどのように活用しているかSAP Business AI とは何か、そしてSAPのパートナーや顧客がそれをどのように活用できるのかSAP AI Core・SAP AI Launchpad・Joule とは何かSAPのAI戦略においてSAP BTPが果たす役割実際のユースケースやハンズオン事例など理解しやすくするため、このブログシリーズは短いセクションに分けられています。それぞれのブログは、10~15分程度で学習できる内容です。Part1 – SAP Business AIの概要Part2 – SAP Business AIの構成要素Part3 – Joule:SAPのGenerative AI CopilotPart4 – SAP BTPにおけるAI Foundation [現在のブログ]Part5 – SAP AI Coreの概要Part6 – SAP AI Launchpadの概要Part7 – SAP AI CoreとSAP AI Launchpadの使い方Part8 – SAP AI CoreにおけるHello WorldPart9 – Generative AI Hubの概要Part10 – SAP HANA Cloud vector enginePart11 – RAG(Retrieval-Augmented Generation)・SAP AI Core・Generative AI Hub・HANA Cloud vector engine を用いた実際のユースケースこのブログはシリーズの第4回目であり、AI Foundation について学びます。Note: 後続のブログも順次公開予定です。  まずは SAP BTPについて簡単におさらいしましょう2021年1月、SAPは「SAP Business Technology Platform(SAP BTP) 」を発表しました。SAP BTPは、SAPのシステム全体を支える技術基盤であり、顧客やパートナーにとって欠かせない存在です。簡単に言えば、SAP BTPは様々な SAPソリューションやサービスを一つにまとめたプラットフォームです。これにより、企業は新しいクラウドソリューションを構築したり、既存の SAPシステムを柔軟に拡張したりできます。Note: 詳しく知りたい方は「Explaining SAP Business Technology Platform (SAP BTP) to a Beginner」を参考にしてください。 SAP BTPで AI を簡単に活用する方法とは?SAPの顧客やパートナー企業で開発を担当していると、次のような課題に直面することがあるかもしれません:SAP BTP上で新しいアプリケーションを作る、または既存システムを拡張する必要があるアプリケーションに AI機能を組み込みたいサードパーティの AIベンダーや大規模言語モデル(LLM)プロバイダーと直接契約せずに、簡単かつ効率的に導入したいこうした課題を解決するために SAPが提供するのが、AI Foundation です。 AI Foundationとは?その概要と活用方法AI Foundationは、SAP BTP上に用意された「すぐに使えるAIサービスとツール」のセットです。これにより、以下のことが可能になります:信頼性が高く、安全でスケーラブルな方法で、AI機能をアプリケーションに組み込み可能顧客やパートナー企業が新しい AI拡張機能やアプリケーションを簡単に作成サードパーティ大規模言語モデル(LLM)との個別契約を避け、手間を最小化 つまり、AI Foundationを使うことで、開発者はより迅速かつ効率的に AIを活用できるのです。以下の図は、AI Foundationの全体像を示しています。 SAP BTP上のAI Foundationは、顧客・パートナー向けの抽象化レイヤーを提供SAPはいくつかのAIベンダーや大規模言語モデル(LLM)のプロバイダーと提携しています。これにより、顧客がサードパーティ企業との個別契約を結ぶことなく、AIによるイノベーションの恩恵を受けられる環境を整えています。たとえば、GPTシリーズなどの大規模言語モデル(LLM)を活用したい場合、わざわざ別のライセンスを購入する必要はありません。SAP BTP上の「Generative AI Hub」を通じて、複数のベンダーが提供する大規模言語モデルへ簡単にアクセスできます。 AI Foundationを構成する主要コンポーネント以下の図は、AI Foundationを構成する主な要素を示しています。それでは、これらのコンポーネントを一つひとつ詳しく見ていきましょう。 1. AI Business ServicesAI Business Servicesは、SAP BTP上で提供される、すぐに利用可能な汎用AIサービス群です。以下のような特徴があります:AI Business Servicesの活用によって、自社アプリケーションへのAI機能組み込みを簡単に実現ビジネスに関連したデータで事前学習されたAIモデルによって、幅広いビジネスシナリオに対応可能以下の図が示すように、AI Business Servicesは大きく3つのカテゴリに分けられます。 Document ProcessingインテリジェントなDocument Processingを可能にするサービスとして、「Document Information Extraction」があります。Document Information Extraction には、以下のような特徴があります:機械学習を活用することで、書類からの情報抽出プロセスを自動化し効率化を支援ヘッダーや表形式で整理された情報が含まれる大量のビジネス文書を、効果的かつスムーズに処理このサービスを利用すれば、以下のような効果が期待できます:大量の書類をより正確かつ効率的に処理することによる人的エラーや手間の削減品質やコンプライアンスを強化しつつ、ビジネス文書関連の業務プロセスを改善抽出した情報は、さらなるビジネスプロセスの自動化に活用可能です。たとえば、請求書や支払い依頼書を自動的に処理し、請求額と支払額を整合させるなど、業務を一層円滑に進めることができます。 Recommendation(レコメンデーション)このカテゴリでは、人間による意思決定を支援・強化する以下3つのサービスが用意されています:Personalized Recommendation(パーソナライズド・レコメンデーション)Data Attribute Recommendation(データ属性レコメンデーション)Business Entity Recognition(ビジネスエンティティ認識) Personalized Recommendation は、様々な業務やアプリケーションで繰り返し活用できる柔軟なサービスです。以下のような特徴があります:機械学習を用いて、顧客の閲覧履歴や商品説明に基づいて個別にレコメンデーションを提供します幅広いビジネスシナリオに対応できるよう学習済みモデルをトレーニングし、適用することが可能ですたとえば、SAPは Personalized Recommendation を活用し、SAP SuccessFactors の顧客向けに、毎月420万件以上の学習コンテンツを推奨しています。これにより、ユーザーはより適切なコンテンツに迅速にアクセスでき、学習体験の向上を実現しています。 Data Attribute Recommendation は、データセット内に欠損値がある場合に活用できるサービスです。このサービスは、以下のような特徴があります:自然言語テキスト、数値、カテゴリ情報を入力として使用します製品・店舗・ユーザーなどのエンティティを複数クラスへ分類しますデータレコード内の欠損数値属性の予測および補完を実現しますこのサービスを活用することで、以下のような効果が期待できます:データ管理プロセスの自動化・高速化データメンテナンス時のエラーおよび手作業の削減データの一貫性および正確性の向上 Business Entity Recognition は、非構造化テキスト内に含まれる「ビジネス上の特定要素(エンティティ)」を自動的に見つけ出して強調表示するサービスです。ここでいうエンティティとは、請求書番号・顧客名・製品コード・取引先企業名など、業務で頻出する「識別可能な対象」を指します。たとえば、請求書に関する問い合わせメールから、請求書番号や取引先企業名などを抽出し、請求・支払い状況に関する繰り返し発生する問い合わせ対応を自動化することが可能です。 Machine Translation(機械翻訳)SAPは世界各地で、さまざまな言語で利用されており、ほぼ全ての言語に対応する必要があります。そのため、必要な言語へのテキスト翻訳は重要な課題となります。この翻訳プロセスを迅速化・自動化するために、AI Foundationの一部として「SAP Translation Hub」が提供されています。SAP Translation Hub は、複数の言語へのコンテンツ翻訳を支援する再利用可能なサービスです。このサービスを利用することで、ソフトウェアテキスト(例:UIに表示されているテキスト)や関連ドキュメントを高品質かつ高精度で迅速に翻訳できます。また、SAP承認済みの訳語や用語集、そしてSAP固有のコンテンツに特化して学習された機械翻訳を活用することが可能です。これにより、翻訳作業を効率化し、国際的な業務展開をスムーズにサポートします。Note: 全てのAIサービスやその詳細は、SAP Discovery Center または Help Portal で 確認できます。 SAP顧客・パートナーは AI Business Services をどう活用できるか?顧客やパートナーは、提供されているAPIエンドポイントに接続し呼び出すことで、SAPの AIサービスを自社の業務プロセスやアプリケーションに統合することができます。以下は、その一例です。Webサイト訪問者への Personalized Recommendationたとえば、Personalized Recommendation を用いて、Webサイト訪問者に対して閲覧履歴やアイテム情報に基づく高度にパーソナライズされたレコメンデーションを提示できます。以下の図は、このユースケースにおけるアーキテクチャの全体像を示しています。この実現プロセスは、以下のステップで構成されています。Note: 各ステップの具体的な手順は、こちらのチュートリアルで確認できます。また、上記の Personalized Recommendation と同様の方法で、下図のように他のAIサービスも活用することが可能です。 SAP AIサービスに関する追加チュートリアルUse Machine Learning to Extract Information from Business Documents and Enrich DataUse Pre-Trained Machine Learning Models to Process Unstructured TextShape Machine Learning to Process Custom Business DocumentsUse Machine Learning to Classify Data RecordsUse Generative AI to Process Business Documents 2. Generative AI ManagementAI Foundationの2つ目の重要な構成要素が「Generative AI Management」です。SAP BTPにおいて、このカテゴリに該当するサービスが「Generative AI Hub」です。 Generative AI Hubによって、様々な大規模言語モデル(LLM)を活用することができます。それでは、Generative AI Hubについて詳しく見ていきましょう。 Generative AI Hubとは何か?Generative AI Hubは、SAP BTP上でGenerative AIの機能を持つアプリケーション開発を迅速に実現するためのサービスです。このサービスを活用することで、開発者は Azure OpenAI が提供する GPT-4 やオープンソースの Falcon 40B など、複数のプロバイダが提供する大規模言語モデル(LLM)にすぐにアクセスできます。Generative AI Hubは、SAP AI Core経由でのプログラムによる操作 及び SAP AI Launchpad内のプレイグラウンドを利用した操作 によって 複数のGenerative AIを活用できます。さらにGenerative AI Hubは、プロンプトエンジニアリング ・ 生成結果の検証などの機能 を提供します。これにより、SAP BTP上でのGenerative AIアプリケーションの開発を、より安全で信頼性の高い形で加速できます。 以下の図は、Generative AI Hubを用いて複数の大規模言語モデル(LLM)にプロンプトを送信し、その生成結果を比較することで、最適なモデルを特定する一例を示しています。Note: 上記の画像は、こちらのブログから引用したものです。Note: Generative AI Hubの詳細については「Part9 – Generative AI Hubの概要」を参照してください。 AI Workload ManagementAI Workload Managementは、ゼロから新しいAIモデルを構築したい、またはデータ準備・モデルのトレーニング・推論の実行・結果の分析といったAIワークフローを実行したい開発者を対象としています。また、標準化されスケーラブルかつクラウドプロバイダーに依存しない方法でAI関連のタスクを運用したい場合にも適しています。AI Workload Managementでは、AIモデルの作成・トレーニングから精度評価および推論用に公開するための必要なツールをすべて提供します。AI Workload Managementの主なサービスは、次の2つです:SAP AI CoreSAP AI Launchpad SAP AI Core とは何か?SAP AI Coreは、SAP BTP上で利用可能な、高機能なAIランタイムを提供するサービスです。SAP AI Coreを用いることで、AIモデルを効率良く大規模に学習しながら、プライバシーやコンプライアンスの確保を実現します。SAP AI Coreの主な利点の一つは、幅広いプランからGPUやCPUコア、メモリなどの基盤となるインフラリソースを選択できる点です。また、自動スケーリング機能も備わっており、柔軟なリソース管理が可能です。SAP AI Coreで利用可能なさまざまなリソースプランは、こちらからご確認いただけます。Note: SAP AI Coreの詳細については「Part5 – SAP AI Coreの概要」を参照してください。 SAP AI Launchpad とは何か?SAP AI Launchpad は、SAP BTP上で利用可能な、複数のAIランタイム(SAP AI Core を含む)にまたがって、AIワークフローやAIモデルを管理・実行を提供するサービスです。また、Generative AI Hub を通じて、ジェネレーティブAIの機能を提供します。さらに、直感的なユーザーインターフェースを通じて、AIシナリオにおけるライフサイクル管理を一元化できます。これにより、モデルの性能指標を継続的に監視し、必要に応じて再学習することが可能です。Note: SAP AI Launchpad の詳細については「Part6 – SAP AI Launchpadの概要」を参照してください。 SAP AI CoreおよびSAP AI Launchpadに関する重要なポイントSAP AI Core は SAP AI Launchpad とシームレスに連携されていますAIワークフロー管理・プロセス・タスクを容易にする使いやすいインターフェースを提供しますPostman や Pythonスクリプト を使用して操作することも可能ですSAP BTP上でマルチテナントなSaaSアプリケーションとして動作します(SAP AI Coreインスタンスを含む)複数の AIランタイムを一元的に管理するためのプラットフォームとして利用できます ビジネスデータとコンテキストSAPシステムが他のAIプロバイダと大きく異なるのは、顧客の膨大なビジネスデータを保持している点です。これらのデータこそが、AIモデルを用いて実際のビジネス課題を解決するための鍵となります。SAP HANA Cloud や SAP Datasphere などのソリューションを通じて、SAPはビジネスデータやコンテキストをAIモデルに提供します。特に SAP HANA Cloud vector engine は、Generative AI のユースケースに対応するために特別に設計されています。 SAP HANA Cloud vector engine とは何か?SAP HANA Cloud vector engine は、SAP BTP上で提供される SAP HANA Cloud に新たに追加された機能です。SAP HANA Cloud vector engine を用いることで、独自のビジネスデータを活用したAIモデルの基盤を構築できます。SAP HANA Cloud vector engine は、ベクターデータの効率的な格納・処理をサポートします。つまり、トランザクションデータ、空間情報、グラフデータ、JSONデータなど、多彩なデータタイプを同じSQL環境でベクトルデータと組み合わせ、結合・フィルタリング・選択といった操作が可能です。以下は、SAP HANA Cloud vector engine がもたらす主な利点です:ベクトルやその他のエンタープライズデータを同一データベース内に格納することで、データアーキテクチャ・管理・セキュリティを簡素化しますベクターデータを含むあらゆるデータタイプに対してSQLを用いた操作が可能です空間データ・グラフデータ・JSONデータ、カスタムSQLScriptをベースにしたクエリとベクトルクエリを組み合わせることで、新たなデータインサイトを提供しますSAP HANA Cloudクライアント(Python対応)、Python Machine Learning Client for SAP HANA(hana-ml)、CAP(Cloud Application Programming)を用いたベクターデータに基づくソリューションを構築できますNote: SAP HANA Cloud vector engineの詳細については「Part10 – SAP HANA Cloud vector engine」を参照してください。 SAP HANA Cloudは、予測分析用のライブラリであるPredictive Analysis Library(PAL)及び 自動予測用のライブラリである Automated Predictive Library(APL)を提供しています。これらのライブラリを用いることで、ビジネスデータに直接適用可能な分類・回帰・時系列予測などのシナリオを実装できます。また、SAPはデータ管理向けにSAP Datasphereというソリューションも提供しています。SAP Datasphere はデータ統合・データ品質管理・クレンジング(欠損値や重複値の補正など)・データガバナンス・アナリティクス(トレンド検出、過去データ分析、将来予測など)・自然言語処理といった様々な形でAIを活用し、ビジネスデータを最大限に生かせる環境を整えます。 Foundation ModelAI Foundation の枠組みのもと、SAP BTPはさまざまなGenerative AI を用いたユースケースを実現するための幅広い Foundation Model を提供しています。SAP は Google・Meta・IBM・Nvidia などの主要な汎用AIベンダーや大規模言語モデル(LLM)プロバイダーと提携することで、顧客にシームレスな体験を提供しています。これらのファウンデーションモデルにより、SAPの顧客は急速に進化するイノベーションに対応しつつ、自身のシナリオに最適なモデルを柔軟に選択できるようになります。Foundation Model とは何か?Foundation Modelは、多種多様な形式のデータを大量に学習することで特定の分野における任意のタスクに対応できる、教師なし学習を用いて学習された深層学習モデルのことです。テキスト生成・画像生成など幅広いタスクに適応できます。Foundation Modelは、様々なユースケースをサポートする汎用的な技術と見なされます。これらのモデルは、強力なハードウェアと高度な技術を使用して大規模なデータセットで事前に学習されているため、特定のアプリケーションごとに新しいモデルをトレーニングする必要が無く、時間と計算コストを削減することができます。Note: 詳細については「What is Foundation Model?」をご参照ください。 SAP Foundation Models – 企業AIを再定義するSAP独自のFoundation Modelまずは、なぜ顧客がSAP独自の Foundation Model を必要としているのかを考えてみましょう。汎用的な Foundation Model だけでは、SAPの顧客に十分でない理由膨大なデータで事前学習された汎用的な Foundation Model は数多く存在します。AI Foundationでは、GPT-4、Llama2、Falcon-40b、Claude2など、こうした多様な大規模言語モデル(LLM)へ容易にアクセスできます。これらのモデルは素晴らしい性能を提供しますが、いくつかの課題も存在します。大規模言語モデル(LLM)は古いトレーニングデータに依存する可能性大規模言語モデル(LLM)を非常に優秀な同僚に例えてみます。その同僚は多くのことを知っていますが、昨年世界で何が起きたか知らず、あなたの会社固有の内部手続きや方針についても理解していません。これは、大規模言語モデル(LLM)が学習時点までのデータを基に学習しており、それ以降の新しい情報を持っていないためです。個々の企業固有のデータやビジネスプロセスのコンテキストが欠如「先週、わが社で最も重要なサプライヤーから受けたオファーについてどう思う?」と大規模言語モデル(LLM)に尋ねても正確な回答を返せない場合があります。これは、大規模言語モデル(LLM)が汎用的な知識で構成されており、特定の企業データやビジネスプロセスのコンテキストについて学習していないためです。これらの問題は、適切なビジネスデータやコンテキストを補足すれば解消することができます。ここで登場するのが SAP Foundation Model です。SAPは、SAP固有のビジネスデータとコンテキストをLLMに取り入れることで、顧客にとって最適なモデルを生み出そうとしています。 SAP Foundation Model とは何か?SAPは、汎用的な Foundation Model と深いビジネスプロセス知見およびビジネスデータを組み合わせ、独自の Foundation Model を設計しています。このモデルにより、顧客は特定のビジネスコンテキストに即した回答を得られるようになります。SAP Foundation Model は、財務・営業・サプライチェーンなど、あらゆる主要なビジネス領域において非常に有用です。請求書の支払日を予測したり、サプライヤーの納品品質を評価したり、ビジネスプロセスの効率化を提案したりといった、汎用的な Foundation Model では対応が難しい日々のビジネス課題にも的確に応えることが可能になります。さらに、SAP Foundation Model は、特定のシナリオに合わせたファインチューニング(追加学習)も可能であり、組み込み型AI分野でのSAPのリーダーシップをより強化します。顧客は豊富なSAPデータで学習された高性能なモデルを活用し、より優れた予測結果を得ることができます。なお、SAP Foundation Model が利用可能になるのを待たず、今すぐビジネスデータのコンテキストをを活用したい場合は、Retrieval-Augmented Generation(RAG)と呼ばれる別のアプローチを用いることで、ビジネスデータのコンテキストを即座に活用し、より良い結果を得ることも可能です。Note: RAGの詳細については「Part11 – RAG (Retrieval-Augmented Generation) ・SAP AI Core・Generative AI Hub・HANA Cloud vector engine を用いた実際のユースケース」を参照してください。 What’s Next?Part5 – SAP AI Coreの概要免責事項本ブログに記載されているすべての見解および意見は、私個人のものであり、個人的な立場で述べられたものです。SAPは、本ブログに掲載された内容について一切の責任を負いませんので、あらかじめご了承ください。   Read More Technology Blogs by SAP articles 

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