このブログはEcosystem Growth活動の一環で「Generative AI with SAP(@Raja_Gupta)」シリーズを日本語化・加筆したものです。このシリーズでは、SAPがポートフォリオ全体でどのように AI および Generative AI を活用しているかを理解することに焦点を当てています。
このシリーズで学べること:
SAPがポートフォリオ全体で AI および Generative AI をどのように活用しているかSAP Business AI とは何か、そしてSAPのパートナーや顧客がそれをどのように活用できるのかSAP AI Core・SAP AI Launchpad・Joule とは何かSAPのAI戦略においてSAP BTPが果たす役割実際のユースケースやハンズオン事例など
理解しやすくするため、このブログシリーズは短いセクションに分けられています。それぞれのブログは、10~15分程度で学習できる内容です。
Part1 – SAP Business AIの概要Part2 – SAP Business AIの構成要素Part3 – Joule:SAPのGenerative AI Copilot [現在のブログ]Part4 – SAP BTPにおけるAI Foundation Part5 – SAP AI Coreの概要Part6 – SAP AI Launchpadの概要Part7 – SAP AI CoreとSAP AI Launchpadの使い方Part8 – SAP AI CoreにおけるHello WorldPart9 – Generative AI Hubの概要Part10 – SAP HANA Cloud vector enginePart11 – RAG(Retrieval-Augmented Generation)・SAP AI Core・Generative AI Hub・HANA Cloud vector engine を用いた実際のユースケース
このブログはシリーズの第3回目であり、SAPのGenerative AI CopilotであるJouleについて学びます。
英語版の原著ブログはこちらからご覧いただけます。
Note: 後続のブログも順次公開予定です。
Jouleとは?
信頼できるAIのパートナーがあなたのそばにいて、自然な言語と生成能力を駆使し、SAPのクラウドポートフォリオ全体で日々の業務をサポート・向上させてくれる生成AI Copilot、それがJouleです。
以下にJouleの主要ポイントをまとめました。
それぞれのポイントについて詳しく見ていく前に、Jouleをよりよく理解するため、いくつかの重要な用語を簡単に整理していきましょう。
Generative AI (生成AI)とは?
生成AIは、芸術作品、音楽、リアルな画像など、新しいものを作り出すことができる人工知能(AI)の一種です。あらかじめ何を作るかを具体的に指示されなくても、新しいものを生み出せるという特徴があります。
生成AIは、既存のデータからパターンを学ぶことによって新しいコンテンツを作り出すことができます。まるでクリエイティブな機械が、見たデータを直接コピーすることなく、アートや音楽、テキストなど、新しいものを想像して生成するようなものです。
生成AIの基本を学ぶには、本ブログの基となる英語版著者が公開している「Generative AI for Beginners」をご覧ください。
AI、機械学習(ML)、生成AIについて非常にシンプルな形で理解したい場合は、同じく本ブログの英語版著者が公開している「How I Explained AI, Machine Learning and Generative AI to My 5 Year-old Kid」をご参照ください。
AI Copilotとは?
ちょうど副操縦士がパイロットを補佐して飛行機を操縦するように、AI Copilotは様々なタスクであなたを助けるスマートなアシスタントとして機能します。
AI Copilotは人工知能を活用してあなたのニーズを理解し、提案やサポートを提供するツールです。これにより、作業がより簡単で効率的になります。
AI Copilotはどのように動作するのでしょうか?
技術的には、AI Copilotは大規模言語モデル(LLM: Large Language Model)を使用して、ユーザーを様々なタスクや意思決定プロセスでサポートする会話型インターフェースです。
LLMを活用することで、AI Copilotは膨大な量のデータを理解・分析・処理する能力を持っています。
簡単な例を挙げます。例えば、あなたがPCでレポートを書いているとします。AI Copilotは、あなたが書いている内容を理解し、より良い言葉や表現を提案したり、スペルチェックや文法の修正を行ったり、レポートに含めるべき関連情報を見つける手助けをしてくれるツールとして機能します。
要するに、AI Copilotは複雑なタスクを簡素化し、貴重なガイダンスとサポートを提供することで、最終的にはユーザーの体験を向上させ、ビジネスが効果的かつ効率的に目標に向かうことを支援します。
市場におけるいくつかのAI Copilot
Jouleの他にも、以下のようなAI Copilotサービスが展開されています。
・Microsoft Copilot
MS Office製品と連携し、Word・Excel・PowerPointなどのアプリケーションにおけるサポートを提供
・GitHub Copilot
より効率的かつ効果的なコード開発を支援
Data Contextualization (データの文脈化)とは?
Data Contextualization (データの文脈化) とは、データに関連する情報を追加して、より実用的なものにするプロセスです。これには、背景情報やパターン、トレンド、アウトライヤー(外れ値)などを含め、データが何を意味しているのかユーザが理解しやすくするための手法が含まれます。
それではここから、本ブログのメインテーマであるJouleについて見ていきましょう!
改めて、Jouleとは?
信頼できるAIパートナーがあなたのそばにいて、自然言語の理解・生成能力を活用し、SAPのクラウドポートフォリオ全体で日々の業務を支援・向上させてくれる存在、それがJouleです。
Jouleは次のような特徴を持っています:
先進的な生成AI CopilotSAPのクラウドエンタープライズポートフォリオ全体にEmbeddedされた(埋め込まれた)存在SAPのアプリケーションやサードパーティのソースから幅広く深い情報を取り込み、能動的かつ文脈に基づいたインサイトを提供
Jouleは、人々がより迅速に仕事を進め、安全かつコンプライアンスに準拠した方法でより良いビジネス成果を上げるのを支援するよう設計されています。
お客様のJoule活用イメージ
Jouleは複数のシステムからデータを迅速に整理し、文脈を追加してスマートなインサイトを提供します。
Jouleは、人事、財務、サプライチェーン、調達、顧客体験などの領域に関するSAPアプリケーション、およびSAP BTP: Business Technology Platformに組み込まれます。Jouleは、SAPのビジネスデータおよびビジネスプロセスで事前に学習が行われています。
ユーザーは単に質問をしたり、問題を平易な言葉で述べるだけで、SAPのポートフォリオおよびサードパーティソース全体から膨大なビジネスデータを基にしたインテリジェントな回答を、文脈を維持したまま受け取ることができます。
例えば、製造業者が販売実績をより良く理解するためにJouleにヘルプを求めるシチュエーションを想像してみてください。Jouleは販売が低迷している地域を特定し、サプライチェーンの問題を明らかにする他のデータセットとリンクし、その後、サプライチェーンシステムに自動的に接続して製造業者が検討できる潜在的な対策を提案することができます。
また、HR(人事)の分野では、Jouleは偏りのない求人情報を作成したり、適切な面接質問を生成するのにも役立ちます。
JouleはSAP Conversational AIの後継ですか?
明確に言うと、JouleはSAP Conversational AIの後継として位置づけられるわけではなく、むしろ進化形や補完的な存在と考えることができます。SAP Conversational AIは主にチャットボットや自然言語処理にフォーカスしたツールですが、Jouleはそれを含めて、さらに高度な生成AIやデータの文脈化機能を提供します。
Jouleは、SAPのクラウドエンタープライズポートフォリオ全体にわたるデータを基に、プロアクティブかつ文脈に基づいたインサイトを提供するため、より広範な業務プロセスを支援することが可能です。つまり、JouleはSAP Conversational AIの機能を超えて、ユーザーにとってさらに多くの価値を生み出す次世代のAI Copilotと言えるでしょう。
おさえておくべきJouleの重要事項
Jouleの重要事項は以下の3点です。
SAPアプリケーションとの統合
Jouleは、SAPアプリケーションに統合された会話型ユーザーインターフェースを提供します。これは、SAP Fiori準拠のUIコントロールを使用してアシスタントの応答を表示するリッチなウェブクライアントです。
エンタープライズ対応
Jouleは、SAPバックエンドシステムとの即時に統合され、利用可能となります。また、AI倫理、GDPR、プライバシーコントロールに準拠しており、SOC-IIのコンプライアンスも維持しています。
自動アップデート
Jouleは、機能が追加または変更されるたびに自動的にアップデートされます。
SAP SuccessFactors HXMにおけるJoule活用
SAP SuccessFactorsで既にJouleが利用可能です
SAP SuccessFactorsのユーザーは、現在SAPの新しい生成AIアシスタントJouleを使ってHRタスクを実行することができます。例えば、従業員は質問に対する回答を得たり、休暇申請の承認や却下、名前や勤務地、個人代名詞の変更などのHR関連タスクを完了できます。
詳細については、アナウンスメントおよびヘルプドキュメントを参照してください。
また、erik.ebert2によるブログ「Say hello to Joule – Your Digital Assistant for SuccessFactors and other SAP Cloud products」もご覧ください。
SAP Business Application StudioにおけるJoule活用
JouleはSAP Business Application Studioに組み込まれていますが、一部制限があります。
詳細については、xinyeによるブログ「Joule on SAP Business Application Studio」を参照してください。
Jouleに関する最新情報を取得するには?
Jouleに関する最新情報の取得に役立つサイトをご紹介します。
SAP Joule product pageSAP Community for Joule
次のトピック
[日本語化] Generative AI with SAP – Part4 – SAP BTPにおけるAI Foundation
免責事項 – このブログに記載されているすべての見解および意見は本ブログ著者である私自身のものであり、私の個人的な立場で述べられたものです。SAPは、このブログに掲載されている内容について一切の責任を負いません。
このブログはEcosystem Growth活動の一環で「Generative AI with SAP(@Raja_Gupta)」シリーズを日本語化・加筆したものです。このシリーズでは、SAPがポートフォリオ全体でどのように AI および Generative AI を活用しているかを理解することに焦点を当てています。このシリーズで学べること:SAPがポートフォリオ全体で AI および Generative AI をどのように活用しているかSAP Business AI とは何か、そしてSAPのパートナーや顧客がそれをどのように活用できるのかSAP AI Core・SAP AI Launchpad・Joule とは何かSAPのAI戦略においてSAP BTPが果たす役割実際のユースケースやハンズオン事例など理解しやすくするため、このブログシリーズは短いセクションに分けられています。それぞれのブログは、10~15分程度で学習できる内容です。Part1 – SAP Business AIの概要Part2 – SAP Business AIの構成要素Part3 – Joule:SAPのGenerative AI Copilot [現在のブログ]Part4 – SAP BTPにおけるAI Foundation Part5 – SAP AI Coreの概要Part6 – SAP AI Launchpadの概要Part7 – SAP AI CoreとSAP AI Launchpadの使い方Part8 – SAP AI CoreにおけるHello WorldPart9 – Generative AI Hubの概要Part10 – SAP HANA Cloud vector enginePart11 – RAG(Retrieval-Augmented Generation)・SAP AI Core・Generative AI Hub・HANA Cloud vector engine を用いた実際のユースケースこのブログはシリーズの第3回目であり、SAPのGenerative AI CopilotであるJouleについて学びます。英語版の原著ブログはこちらからご覧いただけます。Note: 後続のブログも順次公開予定です。 Jouleとは?信頼できるAIのパートナーがあなたのそばにいて、自然な言語と生成能力を駆使し、SAPのクラウドポートフォリオ全体で日々の業務をサポート・向上させてくれる生成AI Copilot、それがJouleです。以下にJouleの主要ポイントをまとめました。それぞれのポイントについて詳しく見ていく前に、Jouleをよりよく理解するため、いくつかの重要な用語を簡単に整理していきましょう。 Generative AI (生成AI)とは?生成AIは、芸術作品、音楽、リアルな画像など、新しいものを作り出すことができる人工知能(AI)の一種です。あらかじめ何を作るかを具体的に指示されなくても、新しいものを生み出せるという特徴があります。生成AIは、既存のデータからパターンを学ぶことによって新しいコンテンツを作り出すことができます。まるでクリエイティブな機械が、見たデータを直接コピーすることなく、アートや音楽、テキストなど、新しいものを想像して生成するようなものです。生成AIの基本を学ぶには、本ブログの基となる英語版著者が公開している「Generative AI for Beginners」をご覧ください。AI、機械学習(ML)、生成AIについて非常にシンプルな形で理解したい場合は、同じく本ブログの英語版著者が公開している「How I Explained AI, Machine Learning and Generative AI to My 5 Year-old Kid」をご参照ください。 AI Copilotとは?ちょうど副操縦士がパイロットを補佐して飛行機を操縦するように、AI Copilotは様々なタスクであなたを助けるスマートなアシスタントとして機能します。AI Copilotは人工知能を活用してあなたのニーズを理解し、提案やサポートを提供するツールです。これにより、作業がより簡単で効率的になります。AI Copilotはどのように動作するのでしょうか?技術的には、AI Copilotは大規模言語モデル(LLM: Large Language Model)を使用して、ユーザーを様々なタスクや意思決定プロセスでサポートする会話型インターフェースです。LLMを活用することで、AI Copilotは膨大な量のデータを理解・分析・処理する能力を持っています。簡単な例を挙げます。例えば、あなたがPCでレポートを書いているとします。AI Copilotは、あなたが書いている内容を理解し、より良い言葉や表現を提案したり、スペルチェックや文法の修正を行ったり、レポートに含めるべき関連情報を見つける手助けをしてくれるツールとして機能します。要するに、AI Copilotは複雑なタスクを簡素化し、貴重なガイダンスとサポートを提供することで、最終的にはユーザーの体験を向上させ、ビジネスが効果的かつ効率的に目標に向かうことを支援します。市場におけるいくつかのAI CopilotJouleの他にも、以下のようなAI Copilotサービスが展開されています。・Microsoft CopilotMS Office製品と連携し、Word・Excel・PowerPointなどのアプリケーションにおけるサポートを提供・GitHub Copilotより効率的かつ効果的なコード開発を支援Data Contextualization (データの文脈化)とは?Data Contextualization (データの文脈化) とは、データに関連する情報を追加して、より実用的なものにするプロセスです。これには、背景情報やパターン、トレンド、アウトライヤー(外れ値)などを含め、データが何を意味しているのかユーザが理解しやすくするための手法が含まれます。それではここから、本ブログのメインテーマであるJouleについて見ていきましょう! 改めて、Jouleとは?信頼できるAIパートナーがあなたのそばにいて、自然言語の理解・生成能力を活用し、SAPのクラウドポートフォリオ全体で日々の業務を支援・向上させてくれる存在、それがJouleです。Jouleは次のような特徴を持っています:先進的な生成AI CopilotSAPのクラウドエンタープライズポートフォリオ全体にEmbeddedされた(埋め込まれた)存在SAPのアプリケーションやサードパーティのソースから幅広く深い情報を取り込み、能動的かつ文脈に基づいたインサイトを提供Jouleは、人々がより迅速に仕事を進め、安全かつコンプライアンスに準拠した方法でより良いビジネス成果を上げるのを支援するよう設計されています。 お客様のJoule活用イメージJouleは複数のシステムからデータを迅速に整理し、文脈を追加してスマートなインサイトを提供します。Jouleは、人事、財務、サプライチェーン、調達、顧客体験などの領域に関するSAPアプリケーション、およびSAP BTP: Business Technology Platformに組み込まれます。Jouleは、SAPのビジネスデータおよびビジネスプロセスで事前に学習が行われています。ユーザーは単に質問をしたり、問題を平易な言葉で述べるだけで、SAPのポートフォリオおよびサードパーティソース全体から膨大なビジネスデータを基にしたインテリジェントな回答を、文脈を維持したまま受け取ることができます。 例えば、製造業者が販売実績をより良く理解するためにJouleにヘルプを求めるシチュエーションを想像してみてください。Jouleは販売が低迷している地域を特定し、サプライチェーンの問題を明らかにする他のデータセットとリンクし、その後、サプライチェーンシステムに自動的に接続して製造業者が検討できる潜在的な対策を提案することができます。また、HR(人事)の分野では、Jouleは偏りのない求人情報を作成したり、適切な面接質問を生成するのにも役立ちます。 JouleはSAP Conversational AIの後継ですか?明確に言うと、JouleはSAP Conversational AIの後継として位置づけられるわけではなく、むしろ進化形や補完的な存在と考えることができます。SAP Conversational AIは主にチャットボットや自然言語処理にフォーカスしたツールですが、Jouleはそれを含めて、さらに高度な生成AIやデータの文脈化機能を提供します。Jouleは、SAPのクラウドエンタープライズポートフォリオ全体にわたるデータを基に、プロアクティブかつ文脈に基づいたインサイトを提供するため、より広範な業務プロセスを支援することが可能です。つまり、JouleはSAP Conversational AIの機能を超えて、ユーザーにとってさらに多くの価値を生み出す次世代のAI Copilotと言えるでしょう。 おさえておくべきJouleの重要事項Jouleの重要事項は以下の3点です。SAPアプリケーションとの統合Jouleは、SAPアプリケーションに統合された会話型ユーザーインターフェースを提供します。これは、SAP Fiori準拠のUIコントロールを使用してアシスタントの応答を表示するリッチなウェブクライアントです。エンタープライズ対応Jouleは、SAPバックエンドシステムとの即時に統合され、利用可能となります。また、AI倫理、GDPR、プライバシーコントロールに準拠しており、SOC-IIのコンプライアンスも維持しています。自動アップデートJouleは、機能が追加または変更されるたびに自動的にアップデートされます。 SAP SuccessFactors HXMにおけるJoule活用SAP SuccessFactorsで既にJouleが利用可能ですSAP SuccessFactorsのユーザーは、現在SAPの新しい生成AIアシスタントJouleを使ってHRタスクを実行することができます。例えば、従業員は質問に対する回答を得たり、休暇申請の承認や却下、名前や勤務地、個人代名詞の変更などのHR関連タスクを完了できます。詳細については、アナウンスメントおよびヘルプドキュメントを参照してください。また、erik.ebert2によるブログ「Say hello to Joule – Your Digital Assistant for SuccessFactors and other SAP Cloud products」もご覧ください。 SAP Business Application StudioにおけるJoule活用JouleはSAP Business Application Studioに組み込まれていますが、一部制限があります。詳細については、xinyeによるブログ「Joule on SAP Business Application Studio」を参照してください。 Jouleに関する最新情報を取得するには?Jouleに関する最新情報の取得に役立つサイトをご紹介します。SAP Joule product pageSAP Community for Joule 次のトピック[日本語化] Generative AI with SAP – Part4 – SAP BTPにおけるAI Foundation 免責事項 – このブログに記載されているすべての見解および意見は本ブログ著者である私自身のものであり、私の個人的な立場で述べられたものです。SAPは、このブログに掲載されている内容について一切の責任を負いません。 Read More Technology Blogs by SAP articles
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