2025 年春、SAP ジャパン の有志メンバーで結成したチーム 「TO BEs」 は、SAP BTP Hackathon 2025 に参加し、 本ハッカソンの公式テーマ「SAP業務にAIでSurpriseを!それ、AIに任せません?」のもと、社内で“もし自分たちが現場でソリューションを構築するとしたら?”というエキシビションとして挑戦しました。
本記事は、その成果として開発した Purchase Pilot の概要と技術アーキテクチャ、およびデモをまとめたレポートです。SAP Community の皆さんからのフィードバックを楽しみにしています!
背景 — フリーテキスト発注が生む 3 つの課題
SAP S/4HANA などの購買業務では、品目マスタが存在しない場合に「テキスト発注」が使われます。しかしこの運用には、以下のような問題がつきまといます。
業務負荷の増大 — 項目を 1 行ずつ入力・確認する手間。 データ品質の低下 — 記述ゆれや入力ミスで KPI が組めない。 意思決定の遅延 — 精度の低い実績データが経営判断を鈍らせる。
私たちは、この “曖昧で非定型” な領域こそ AI が真価を発揮する余地だと考えました。
ソリューション — Purchase Pilot とは?
迷わず・ミスなく・効率的に。
Purchase Pilot は、現場担当者がテキスト発注を入力する際に AI がリアルタイムで支援 するツールです。コア機能は次の 2 つです。
仕組み — 2 つのコア機能を深掘り
1. インテリジェントな入力補完 — 処理フロー
ざっくり 3 ステップで完結します。
過去レコードをベクトルとして準備
– 過去の正確なテキスト発注レコードを抽出し、Short Text をベクトル化して Vector Engine へ保存。 類似レコード × Few‑shot
– マニュアル入力された Short Text をベクトル化し、類似度検索でトップ 3 件を取得。
意味情報を加えて補完
– S/4HANA Cloud からコストセンタ名など “意味テキスト” を取得。
– LLM が Few‑shot とフィールド定義情報を基に各必要項目を推定し、UI 上で提案。
Few‑shot とは、過去レコードを “お手本” として数件渡すことで、LLM により正確な出力を促す手法です。
2. リアルタイムな異常検知 — 処理フロー
流れは次の 4 ステップです。
過去レコードをベクトルとして準備
– 過去の正確なテキスト発注レコードを抽出し、Short Text をベクトル化して Vector Engine へ保存。 品目グループ・発注単位を推定
– マニュアル入力された Short Text をベクトル化し、類似度検索でトップ 3 件を取得。
– Few‑shot とフィールド定義情報を組み合わせて、LLM が品目グループと発注単位を推定。 レンジを計算
– 推定した品目グループをキーに S/4HANA Cloud へ問い合わせ、過去レコードから単価・個数レンジを動的に算出。異常を判定 & 警告
– 入力された単価・個数がレンジ外なら即警告。ユーザーは確認モーダル経由で上書き確定も可能。
ソリューションアーキテクチャ
* 印はハッカソン時点では未実装のコンポーネントです。
アーキテクチャ図のポイント
SAP BTP Cloud Foundry 上に CAP アプリ (Node.js/Python) を配置し、SAP HANA Cloud と SAP AI Core/Gen AI Hub をサービスブローカー経由で統合。Embedding 処理でテキストをベクトル化し、HANA Cloud の Vector Engine に保存・検索。フロントエンドは SAP Build Work Zone にデプロイされた Fiori Elements アプリとして提供。オンプレ SAP S/4HANA とは Cloud Connector で安全にトンネリングし、購買伝票やマスタを連携。(*は PoC では未接続)SAP Cloud Solutions(S/4HANA Cloud, Ariba など)とも同じ OData/SAP BTP 接続モデルで拡張可能。
デモ動画 — “5 分入力” が “数十秒” に短縮
動画の流れ
SAP GUI で従来のフリーテキスト発注
– マニュアルでのテキスト発注入力は、操作に慣れたユーザでも約 5 分ほどの時間を要し、いくつかの入力ミスが発生します。Purchase Pilot – 自動補完機能の実演
– Recommend ボタンをクリックすると、テキストから勘定コード・単位・コストセンタなどを自動補完します。Purchase Pilot – 異常検知機能の実演
– 手入力した伝票に対して Validate ボタンを押すと、AI が不足項目や異常値を即時指摘し、修正アドバイスを提示します。
このソリューションにより、入力時間の削減 や 入力ミスの軽減 を実現することができます!また、異常をリアルタイム検知することで、手戻りがゼロ になり、クリーンなデータによる経営指標を高速更新に繋がります!
まとめ
SAP ジャパン チーム TO BEs の挑戦: 社員視点で “現場 DX” をテーマに、AI × BTP の可能性を検証Purchase Pilot の価値: テキスト発注という “最後の手入力領域” を AI で変革し、操作性とデータ品質を同時に向上。
ご意見をお聞かせください! コメント欄や SNS でのフィードバックをお待ちしています。
2025 年春、SAP ジャパン の有志メンバーで結成したチーム 「TO BEs」 は、SAP BTP Hackathon 2025 に参加し、 本ハッカソンの公式テーマ「SAP業務にAIでSurpriseを!それ、AIに任せません?」のもと、社内で“もし自分たちが現場でソリューションを構築するとしたら?”というエキシビションとして挑戦しました。本記事は、その成果として開発した Purchase Pilot の概要と技術アーキテクチャ、およびデモをまとめたレポートです。SAP Community の皆さんからのフィードバックを楽しみにしています! 背景 — フリーテキスト発注が生む 3 つの課題SAP S/4HANA などの購買業務では、品目マスタが存在しない場合に「テキスト発注」が使われます。しかしこの運用には、以下のような問題がつきまといます。業務負荷の増大 — 項目を 1 行ずつ入力・確認する手間。 データ品質の低下 — 記述ゆれや入力ミスで KPI が組めない。 意思決定の遅延 — 精度の低い実績データが経営判断を鈍らせる。私たちは、この “曖昧で非定型” な領域こそ AI が真価を発揮する余地だと考えました。 ソリューション — Purchase Pilot とは?迷わず・ミスなく・効率的に。Purchase Pilot は、現場担当者がテキスト発注を入力する際に AI がリアルタイムで支援 するツールです。コア機能は次の 2 つです。 仕組み — 2 つのコア機能を深掘り1. インテリジェントな入力補完 — 処理フローざっくり 3 ステップで完結します。過去レコードをベクトルとして準備- 過去の正確なテキスト発注レコードを抽出し、Short Text をベクトル化して Vector Engine へ保存。 類似レコード × Few‑shot- マニュアル入力された Short Text をベクトル化し、類似度検索でトップ 3 件を取得。意味情報を加えて補完- S/4HANA Cloud からコストセンタ名など “意味テキスト” を取得。- LLM が Few‑shot とフィールド定義情報を基に各必要項目を推定し、UI 上で提案。Few‑shot とは、過去レコードを “お手本” として数件渡すことで、LLM により正確な出力を促す手法です。 2. リアルタイムな異常検知 — 処理フロー流れは次の 4 ステップです。過去レコードをベクトルとして準備- 過去の正確なテキスト発注レコードを抽出し、Short Text をベクトル化して Vector Engine へ保存。 品目グループ・発注単位を推定- マニュアル入力された Short Text をベクトル化し、類似度検索でトップ 3 件を取得。- Few‑shot とフィールド定義情報を組み合わせて、LLM が品目グループと発注単位を推定。 レンジを計算- 推定した品目グループをキーに S/4HANA Cloud へ問い合わせ、過去レコードから単価・個数レンジを動的に算出。異常を判定 & 警告- 入力された単価・個数がレンジ外なら即警告。ユーザーは確認モーダル経由で上書き確定も可能。 ソリューションアーキテクチャ* 印はハッカソン時点では未実装のコンポーネントです。アーキテクチャ図のポイントSAP BTP Cloud Foundry 上に CAP アプリ (Node.js/Python) を配置し、SAP HANA Cloud と SAP AI Core/Gen AI Hub をサービスブローカー経由で統合。Embedding 処理でテキストをベクトル化し、HANA Cloud の Vector Engine に保存・検索。フロントエンドは SAP Build Work Zone にデプロイされた Fiori Elements アプリとして提供。オンプレ SAP S/4HANA とは Cloud Connector で安全にトンネリングし、購買伝票やマスタを連携。(*は PoC では未接続)SAP Cloud Solutions(S/4HANA Cloud, Ariba など)とも同じ OData/SAP BTP 接続モデルで拡張可能。 デモ動画 — “5 分入力” が “数十秒” に短縮動画の流れSAP GUI で従来のフリーテキスト発注- マニュアルでのテキスト発注入力は、操作に慣れたユーザでも約 5 分ほどの時間を要し、いくつかの入力ミスが発生します。Purchase Pilot – 自動補完機能の実演- Recommend ボタンをクリックすると、テキストから勘定コード・単位・コストセンタなどを自動補完します。Purchase Pilot – 異常検知機能の実演- 手入力した伝票に対して Validate ボタンを押すと、AI が不足項目や異常値を即時指摘し、修正アドバイスを提示します。このソリューションにより、入力時間の削減 や 入力ミスの軽減 を実現することができます!また、異常をリアルタイム検知することで、手戻りがゼロ になり、クリーンなデータによる経営指標を高速更新に繋がります! まとめSAP ジャパン チーム TO BEs の挑戦: 社員視点で “現場 DX” をテーマに、AI × BTP の可能性を検証Purchase Pilot の価値: テキスト発注という “最後の手入力領域” を AI で変革し、操作性とデータ品質を同時に向上。ご意見をお聞かせください! コメント欄や SNS でのフィードバックをお待ちしています。 Read More Technology Blog Posts by SAP articles
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